中国地方の高校サッカーの歴史
中国地方のサッカーには、全国を席巻していた歴史があります。全国高校サッカー選手権では5校(のべ9回)の優勝経験を持っています。
ところが1975年以降、ベスト4入りさえぱったりと途絶えてしまいました。インターハイ(高校総体)では1984年の広島工業(広島)の準優勝以来、中国の高校サッカー部の名前は番付に載らなくなりました。
四半世紀の沈黙を経て、インターハイで広島皆実が1999年に優勝を成し遂げます。
高校サッカー選手権では2005年、多々良学園(山口)がベスト4入り。2007年は高川学園(山口)ベスト4。2006年は作陽(岡山)が準優勝。2008年、広島皆実が優勝。
2010年立正大淞南(島根)がベスト4。
インターハイ(高校総体)では2007年に広島観音(広島)が優勝しました。
ところがそこからまた、中国地方の高校サッカーの低迷の時期といわれる時期になります。
当たり前のようにベスト4入りしていた時代が終わり、全国大会では「1回戦は中国地方の学校だからラッキーだ、勝ち抜ける」という雰囲気があったといいます。
中国地方の高校選手たちのポテンシャルは高いはずだ。
でもこのまま何もしなければ、あの沈黙の四半世紀のようになってしまうかもしれない。
なんとかしたい。それは中国地方の高校サッカーの指導者みなが願ったことでした。
「3年生からでは遅いんだ」
考え抜いた先に「高校1年生が高校に入ってすぐに公式戦がある環境を作ればいいのではないか」と思いついた人たちがいました。
サンフレッチェ広島のスカウト(当時)の足立 修さんと、広島国際学院高校の瀬越 徹監督です。3年生からでは間に合わない。
1年生から厳しい試合の場を設定して強化すべきだ。
2人は、当時全国に先駆けてU-16のリーグ戦を行っていた関東ルーキーリーグの資料を帝京第三高校から取り寄せて研究しました。
高校1年生から強化リーグのようなことを行えば、2年後の選手権で必ず生きてくるに違いない。高校1年生の重要度はそれだけ高いはずだ。
中国地方の強豪高校サッカー部監督たちはその提案に大変好意的でした。
各校の監督たちの尽力の結果、最初の加盟校(オリジナル10)第1回中国ルーキーリーグが2013年に開催されます。
「このままでは中国サッカーはずっとこのままだ」と、危機感を抱いてからわずか半年後のことでした。
最初の10チーム(2013年)は次の通り。(監督名は当時)
・作陽(岡山)野村 雅之監督
・岡山学芸館(岡山)高原 良明監督
・広島皆実(広島)藤井 潔監督
・広島観音(広島)出木谷 浩治監督
・瀬戸内(広島) 安藤 正晴監督
・広島国際学院(広島)瀬越 徹監督
・立正大淞南(島根)南 健司監督
・大社(島根) 佐々井 秀臣監督
・境(鳥取) 廣川 雄一監督
・高川学園(山口)渡邉 光一郎監督
みな、中国地方の高校サッカーでもう一度全国席巻を、と願うチームでした。
中国地方高校サッカー、再びの黄金時代へ
最初はフェスティバル的に始まったリーグでしたが、年を重ねるごとに熱量は増していきました。
熱い試合を見せたい、活気ある大会にしたい。選手の中にもプライドが生まれました。ルーキーリーグでは勝てた学校に、3年生の公式戦で負けたくない。ルーキーリーグで負けた高校には、3年生の公式戦で絶対勝ってやる。
指導者にも良い緊張感が生まれました。
ルーキーリーグではいい戦績を残したのに、3年生で振るわなかったら。
真剣勝負は選手だけでなく、指導者にも大きな刺激を与えています。
2018年、瀬戸内(広島)が全国高校サッカー選手権ベスト4。2021年、高川学園(山口)が選手権ベスト4。インターハイでは2021年に米子北(鳥取)がみごと準優勝をつかみました。
先生たちの手作りで始まった中国ルーキーリーグ LIGA NOVAは今年10周年を迎えます。
新しい選手を迎え、中国地域のサッカーの隆盛に向けて今年も選手を育てていきます。
2022年4月
お話を聞かせてくれた人:瀬越 徹先生(広島国際学院)
中国ルーキーリーグ10周年の歩み